不整脈① 洞調律 正常洞調律 洞不全症候群


医師の心電図ブログ、不整脈編の始まりです

不整脈の解説 全9回
①洞調律 正常洞調律 洞不全症候群
②心房性期外収縮 房室接合部性期外収縮
③発作性上室性頻拍 心房頻拍
④心房粗動 心房細動 偽性心室頻拍(pseud VT)
⑤心室性期外収縮
⑥心室頻拍 TdP torsade de pointes
⑦心室細動
⑧洞房ブロック
⑨房室ブロック

不整脈の1回目は洞性頻脈、洞性徐脈、洞性不整脈についてです。

まず洞調律(sinus rhythm)について説明します。

洞調律 SR sinus rhythm

洞結節から一定のリズムで刺激が発生します。

心電図所見:
ⅠⅡaVF・V3~V6でP波が陽性(P波の電気軸が+15°~+75°ともいえる)

洞調律に含まれるもの
洞性頻脈、洞性徐脈、洞性不整脈、房室ブロックなど

正常洞調律 NSR normal sinus rhythm

心電図所見:
洞調律に加え
①P波とQRSが1対1
②HR50(60)~100/分
③PP間隔、RR間隔がほぼ一定 その変動幅は0.16秒以内
④P波正常(幅、高さ)
⑤PR時間正常
⑥QRS正常(幅、高さ)
⑦他の波形異常もない
※洞性徐脈でもなく、洞性頻脈、洞性不整脈、房室ブロックでもないイメージを描く

洞性頻脈 ST sinus tachycardia

洞結節の刺激発生が増えて頻脈になります。
刺激は正常の伝導路を通るため正常のP-QRS波形になります。

心電図所見:
①ⅠⅡaVF・V3~V6でP波が陽性
②100/分≦HR

発作性上室性頻拍は急にHRが増え、洞性頻脈は徐々にHRが増えます。

原因:発熱、貧血、出血、交感神経の緊張、心嚢液貯留、肺塞栓症、甲状腺機能亢進症など

鑑別:発作性上室性頻拍(PSVT)、心房頻拍(AT)

治療:原疾患があればその治療を行います。頻脈により心臓に負荷がかかる場合はβ遮断薬を使用します。β遮断薬:プロプラノロール(インデラル®)、アテノロール(テノーミン®)など

※参考 洞性頻脈をHRで鑑別する目安
一般的に洞性頻脈の最大心拍数は220ー年齢と言われています。
例えば70歳の人のHRが150/分より早ければ洞性頻脈の可能性は低い。

洞性徐脈 SB sinus bradycardia

洞結節の刺激発生が減り徐脈になります。
刺激は正常の伝導路を通るため正常のP-QRS波形になります。

心電図所見:
①ⅠⅡaVF・V3~V6でP波が陽性
②HR<50(60)/分

原因:副交感神経の緊張、甲状腺機能低下症、高K血症、低体温、薬剤、スポーツ心臓など

鑑別:洞房ブロック、房室ブロック

治療:徐脈によって血圧低下を伴う場合には硫酸アトロピンの投与。

洞性不整脈 SA sinus arrhythmia

若年者や迷走神経緊張状態では刺激発生の変化が起こります。呼吸性の洞性不整脈が多いです。(吸気時にHRは速くなり、呼気時にHRは遅くなります)
通常、最大RR間隔と最小RR間隔の差が0.16秒以上あるときに洞性不整脈とされます。
HR<70/分のことが多い。

心電図所見:
①ⅠⅡaVF・V3~V6でP波が陽性
②PP(RR)間隔が不定…0.16秒≦最大PP間隔ー最小PP間隔

原因:呼吸性、ストレス、若年者

鑑別:PAC、房室ブロック

洞不全症候群 SSS sick sinus syndrome

洞機能が低下し刺激発生が減り不規則になります。洞性徐脈、洞停止、洞房ブロック、徐脈頻脈症候群を生じます。

P-QRSは正常。先行するP波がないことも。

3つのタイプに分類されます。
I型…洞性徐脈
II型…洞停止、洞房ブロック
III型…徐脈頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome)

PSVT、AFL、AFが合併することも。

予後は比較的良好。
めまいや失神を繰り返す場合はペースメーカーの適応になります。

Adams Stokes発作

徐脈により心拍出量が減少し一過性の脳虚血を生じ、めまい、痙攣、失神を起こします。


不整脈はなかなか分かりづらいですよね。
分かりやすい説明を心がけます。

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