心電図⑫ T波

※プロモーションを含みます

12回目はT波です。

T波

T波はQRSの後に出現する波形で、心室の再分極(主な再分極相)を表します。
正常値 振幅 10mm以下、幅0.10~0.25秒
通常、T波は非対称性です


ⅢやV1の単独の陰性T波、平坦T波はほぼ問題なし。(ⅢやV1誘導は正常軸のはずれにあるため。)

T波の増高(上昇)

T波の増高(上昇)…肢誘導で振幅が5mm以上、胸部誘導で10mm以上

T波が増高(上昇)する疾患・病態

STが上昇する疾患と似ています

高カリウム血症
異型狭心症
急性心筋梗塞
早期再分極
くも膜下出血
左脚ブロック
左室拡大
WPW症候群
心室ペーシング
生理的なST-T上昇

※心膜炎はT波は増高しません

テント状T波

高カリウム血症でみられます。
幅が狭く左右対称の尖鋭なT波。(高さは正常or増高)

陰性T波

5mm以上の陰性T波は疾患の可能性が高くなります。

陰性T波になる疾患・病態 初級

たこつぼ型心筋症 たこ
陰性T波 くぼみ
くも膜下出血(脳血管障害) SAH
左室肥大、右室肥大 Left/Right ventricular hypertrophy (strain)
心筋梗塞、狭心症 Ischemia
肺塞栓症(急性肺性心) Pulmonary embolism

+α 若年性T波パターン

ゴロ 陰性T波になる疾患・病態 初級
陰性T波になる疾患の頭の文字を並べて
たこがくぼみでSL(R)IP

陰性T波になる疾患・病態 中級~

肥大型心筋症 肥大
褐色細胞腫 褐色
たこつぼ型心筋症 たこ
陰性T波 くぼみ
くも膜下出血(脳血管障害) SAH
左室肥大、右室肥大 Left/Right ventricular hypertrophy (strain)
心筋梗塞、狭心症 Ischemia
肺塞栓症(急性肺性心) Pulmonary embolism
脚ブロック 脚
Brugada型心電図 coved型 コブ
低カリウム血症 てか
ジギタリス中毒 たりーッス
WPW症候群 w
Wellens症候群 w
+α(若年性T波パターン、非特異的ST-T変化、頻拍発作の停止直後、心室ペースメーカー停止後、過換気症候群)

※aVLの陰性T波は異常の場合があります。(下壁梗塞のミラーの場合があります)

ゴロ 陰性T波になる疾患・病態 中級~
陰性T波になる疾患の頭の文字を並べて
肥大した褐色のたこがくぼみでSL(R)IPして 脚にコブ 「てか、たりーっす」 ww(ワロタ)

noteに心電図ゴロをまとめました。是非、ご覧ください↓

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Wellens症候群

Wellens症候群は不安定狭心症の一種で、胸痛が消えた後に前胸部誘導でT波に心電図変化が現れます。
左前下行枝(LAD)の障害があり、広範な梗塞を発症するリスクが高い状態です。
T波の形によってTypeA:二相性T波、TypeB:陰性T波の2パターンに分類されます。(1型陰性T波、2型二相性T波と表現されることも)

心電図所見:
1.主にV1~V5に二相性T波(陽性→陰性)や陰性T波を生じる。
2.ST変化や異常Q波はほぼない。

鑑別:PE
PEではSⅠQⅢTⅢが通常見られます。また、陰性T波の深さのピークがWellens症候群ではV3V4辺りに対し、PEではV2辺りに多く見られます。

Wellens症候群を治療せずに放置すると、1週間以内に広範前壁梗塞を発症するリスクがあります。

若年性T波パターン Juvenile T wave pattern

若年女性(通常、40歳以下)に見られる、V1~V3の5mm未満の非対称性陰性T波やフラットT波です。これは小児期の名残であり、通常は問題ありません。
若年性T波パターンの特徴として、T波は非対称性で浅い。一方、虚血による陰性T波は対称性で深いという違いがあります。

巨大陰性T波

10mm以上の陰性T波

巨大陰性T波になる疾患・病態

肥大型心筋症
たこつぼ型心筋症
褐色細胞腫
くも膜下出血
心筋梗塞

ゴロ 巨大陰性T波になる疾患
巨大陰部をひたかくし(各疾患の頭の文字をとって)

平坦T波

平坦T波になる疾患・病態:
低カリウム血症:平坦T波から陰性T波、ST低下、QT延長などが見られることがあります。
心筋梗塞の経時変化
生理的なもの

非特異的T波異常、非特異的ST-T変化(異常)
T波は健常人でも体位、運動、過呼吸などにより変化することがあります。1回の心電図で診断できない場合は経過を追っていくことが重要です。

二相性T波

Wellens症候群、正常小児心電図などでみられます。

Wellens症候群の詳細については陰性T波の項目を参照

二峰性T波

“二峰性T波”は形の定義というと分かりやすいでしょうか。以下の2種類があります。

1.T波+P波
T波の中にP波が重なって見られる場合です。例としては洞性頻脈などがあります。

2.T波+U波
低K血症時にみられることがあります。

皆さん、今日もお付き合いありがとうございました。

ER心電図基本編の選択肢と解答を作り、noteにまとめました。
下記から是非、見にきてくださいね。

ER心電図基本編の3倍活用術|医師マイケル 心電図ブログ
ER心電図基本編は良い問題集です。 本書をさらに活用するために全200問に選択肢を作り、解答をつけました。 選択肢で解くことで、短時間で多くの問題をこなせ、メキメキ実力がつくことでしょう。 是非、ご活用下さい。 おまけとしてER心電図基本編...

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