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7回目は冠動脈、心筋梗塞(後半)です。
冠動脈
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2023/07/冠動脈.jpg)
冠動脈は心臓に血液を送ります。
大動脈起始部から右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)が出ます。
左冠動脈は左主幹部(LMT)から、左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCX)が分岐します。
左回旋枝から鈍角枝が分岐します。
左前下行枝から中隔枝と対角枝(側壁を灌流)が分岐します。
さらに細部まで分かれていきます。
右冠動脈:RCA right coronary artery
左冠動脈:LCA left coronary artery
左主幹部:LMT left main trunk
左前下行枝:LAD left anterior descending artery
左回旋枝:LCX left circumflex artery
ゴロ 冠動脈の分岐
①海鮮②丼屋の ③前科者主(あるじ)の④体格は⑤中格
①左回旋枝→②鈍角枝 ③左前下行枝→④対角枝⑤中隔枝
noteに心電図ゴロをまとめました。是非、ご覧ください↓
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141596797/rectangle_large_type_2_e4bcb977cc094fe8b7b960d7b0dbfef6.png?fit=bounds&quality=85&width=1280)
(細かすぎない)冠動脈の灌流域
刺激伝導系
左前下行枝→主に右脚と左脚
左回旋枝→洞結節(約50%)、房室結節(約10%)
右冠動脈→洞結節(約50%)、房室結節(約90%)
心筋
左前下行枝→前壁中隔、側壁
左回旋枝→側壁、後壁、下壁
右冠動脈→右室、下壁、後壁
通常、冠動脈の狭窄で狭心症、閉塞で心筋梗塞となります。
異常Q波やST上昇がみられる誘導と梗塞部位、責任血管
※ST上昇型心筋梗塞の場合
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2023/07/心筋梗塞の部位と誘導.jpg)
※前側壁 ⅠaVL・V3~V6 というのもあります
急性下壁梗塞では右室梗塞の合併を考え、V3R~V5R誘導を記録します。
V3R~V5RにST上昇、異常Q波があれば右室梗塞を考えます。
右冠動脈は下壁と右室を灌流しています。そのため下壁梗塞と右室梗塞は合併しやすい。
心筋梗塞
急性心筋梗塞に伴う脳虚血でけいれんが生じることもあります。
心疾患と脳疾患は関わりあっています。
心筋梗塞部位と閉塞血管
心筋梗塞部位…閉塞血管 ←心筋と冠動脈灌流域の関係ともいえる
前壁中隔梗塞[V1~V4(V1~V3)]…左前下行枝近位部
前壁梗塞[V3V4(V2~V4)]…左前下行枝遠位部
中隔梗塞[V1V2]…第一中隔枝
広範前壁梗塞[ⅠaVL・V1~V6]…左前下行枝近位部
前側壁梗塞(前壁側壁梗塞)[ⅠaVL・V3~V6]…左前下行枝
側壁梗塞[ⅠaVL・V5V6]…左前下行枝や左回旋枝
下壁梗塞のみ[ⅡⅢaVF]→右冠動脈遠位部
下壁梗塞+右室梗塞(+下位側壁V5V6)[ⅡⅢaVF・V1V3RV4R]→右冠動脈近位部
※前壁中隔梗塞+下壁梗塞…Wrapped LAD or LAD+RCA
※左前下行枝近位部の閉塞はⅡⅢ aVFのmirror imageが出やすい。遠位部の閉塞は出にくい。
心筋梗塞部位別の特徴
前壁中隔梗塞
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2023/07/前壁中隔梗塞.jpg)
心電図所見:V1~V4(V1~V3)で
①まずST上昇、T波増高、異常Q波、R波の減高を認める
②その後、陰性T波を生じ、STは改善する
mirror image:Ⅱ Ⅲ aVFのSTが低下しやすい
移行帯はV5、V6 or 移行帯なし←V1~V4でR波が減高するため
原因血管:左前下行枝
鑑別:異型狭心症、心膜炎、心筋炎、たこつぼ型心筋症、Brugada型心電図
検査:冠動脈造影で血管の閉塞がみられます。心エコーで壁運動の低下がみられます。
治療:
冠血行再建術(PTCR、PTCAなど)
薬物療法(亜硝酸剤、抗凝固剤など)
側壁梗塞
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2024/05/無題877-1024x1024.png)
心電図所見:Ⅰ aVL・V5V6で
①まずST上昇、T波増高、異常Q波、R波の減高を認める ただし、心電図変化が目立たないこともある
②その後、陰性T波を生じ、STは改善
mirror image:Ⅱ Ⅲ aVFのST低下しやすい
右軸偏位 ←ⅠでR波が減高するため
原因血管:左前下行枝や左回旋枝
鑑別(心電図上):心膜炎、心筋炎、たこつぼ型心筋症
検査:冠動脈造影で血管の閉塞がみられます。心エコーで壁運動の低下がみられます。
治療:
冠血行再建術(PTCR、PTCAなど)
薬物療法(亜硝酸剤、抗凝固剤など)
下壁梗塞
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2024/02/無題724.png)
心電図所見:Ⅱ Ⅲ aVFで
①まずST上昇、T波増高、異常Q波、R波の減高を認める
②その後、陰性T波を生じ、STは改善
mirror image:Ⅰ aVL(V2、V3)のSTが低下しやすい
下壁梗塞と右室梗塞は合併しやすい。
原因血管:右冠動脈、(左前下行枝)
合併症:急性期に徐脈性不整脈(洞徐脈、1度房室ブロック、Wenckebach型2度房室ブロックなど)
鑑別(心電図上):心膜炎、心筋炎、たこつぼ型心筋症
検査:冠動脈造影で血管の閉塞がみられます。心エコーで壁運動の低下がみられます。
治療:
冠血行再建術(PTCR、PTCAなど)
薬物療法(亜硝酸剤、抗凝固剤など)
後壁梗塞
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2024/05/無題873-1024x1024.png)
![](https://doctorsecg.com/wp-content/uploads/2024/06/無題942-1024x1024.png)
典型的な心筋梗塞の心電図所見(ST上昇、異常Q波など)になりません。
R波の増高、T波の増高が特徴的。
下壁梗塞に合併することが多いです。5%は単独で発生します。
心電図所見:V1、V2で
①まずST低下(ST上昇の鏡像)、T波低下(T波増高の鏡像)、R波増高(異常Q波の鏡像)がみられる。
②その後、T波が上昇(冠性T波の鏡像)し、STは改善。
T波上昇は判別困難な場合がある。
通常でもV1~V3ではST上昇、T波上昇がみられやすいため。
移行帯がV1、V2。
また、後壁梗塞の心電図所見が”移行帯がV1、V2のみ”ということもある。
もちろん、背部誘導(V7~V9)をつければST上昇や異常Q波を検出できる。
※前壁中隔の心内膜下梗塞(非Q波心筋梗塞)でもV1~V4にST低下が起こるので鑑別注意。
原因血管:左回旋枝、右冠動脈
鑑別(心電図上):心内膜下梗塞、WPW症候群A型、右室肥大
検査:冠動脈造影で血管の閉塞がみられます。心エコーで壁運動の低下がみられます。
治療:
冠血行再建術(PTCR、PTCAなど)
薬物療法(亜硝酸剤、抗凝固剤など)
右室梗塞
下壁梗塞に合併しやすい。(約30~50%)
下壁梗塞の際、ST上昇の程度がⅡ<ⅢでV1にST上昇を認める場合(または、下壁梗塞のmirrorにしてはV1のST低下が少ない場合)、右室梗塞の合併を疑います。通常、V3R~V5R誘導を追加します。
心電図所見:Ⅱ Ⅲ aVF・V1、V3R~V5Rで
①急性期はST上昇、T波増高、異常Q波、R波の減高を認める
②その後、陰性T波を生じ、STは改善
血圧低下、右房圧上昇など急性右心不全の病態となります。左室への前負荷が低下するためショックになりやすい。
原因血管:右冠動脈
鑑別(心電図上):異型狭心症、心膜炎、心筋炎
検査:冠動脈造影で血管の閉塞がみられます。心エコーで壁運動の低下がみられます。
合併症 房室ブロック
治療:
冠血行再建術(PTCR、PTCAなど)
薬物療法(亜硝酸剤、抗凝固剤など)
今日もお付き合い頂きありがとうございました。
ER心電図基本編の選択肢と解答を作り、noteにまとめました。
下記から是非、見にきてくださいね。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141927395/rectangle_large_type_2_9069cd86e95502c861329b54924bdc39.jpeg?fit=bounds&quality=85&width=1280)
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