心電図④ 刺激伝導系 調律 P波 PR

※プロモーションを含みます

4回目は刺激伝導系、調律、P波、PRです。

刺激伝導系

心臓の電気刺激の経路。
洞結節(右房にある)から電気刺激が生じます。

洞結節 SA node(sinoatrial node)
右房上部にあるペースメーカー細胞で自動能があります。
正常の心拍リズムを形成しています。
通常、刺激発生の頻度は60~80回/分。

洞結節→心房→房室結節→His束→脚部→Purkinje線維(→心室)と進みます。
房室接合部=房室結節+His束

基線(等電位線) isoelectric line
T波の終わりからP波の始まりまでのTP lineのこと。
通常、電位はゼロ。
基線でST上昇、ST低下の判定を行います。

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調律

洞調律 SR sinus rhythm

洞結節から一定のリズムで刺激が発生します。

Ⅰ、Ⅱ、aVF、V3~V6でP波が陽性(P波の電気軸は+15°~+75°)

(広義の)異所性心房調律

ⅠやⅡ、aVFなどでP波が陰性になります。

(広義の)異所性心房調律の分類
①冠静脈洞調律
②左房調律
③(狭義の)異所性心房調律

冠静脈洞調律

Ⅱ Ⅲ aVFで陰性P波 PR時間は正常
鑑別:房室接合部調律

左房調律

Ⅰ・V6で陰性P波

(狭義の)異所性心房調律

冠静脈洞調律か左房調律か判定できないもの(Ⅰ Ⅱ Ⅲ aVF・V6で陰性P波があるなど)

房室接合部調律

Ⅱ Ⅲ aVFで陰性P波
P波はQRSの前後に出現したり、QRSに重なり隠れます。QRSの前に出現する場合、PR時間は短縮します。
房室接合部にはある程度範囲があるので、発生源によっては陽性P波に近くなることもあります!

P波

心房の脱分極(興奮)を表します。
洞結節で生じた刺激は右房→左房と伝わります。

P波の初めの1/3は右房成分、中1/3は右房成分+左房成分、後ろの1/3は左房成分

正常P波

正常P波

Ⅱで幅3mm未満、高さ2.5mm未満(0.25mv未満)
V1で高さ2mm未満、P波の陰性部分の幅(mm)×深さ(mm)が1未満
ⅠⅡaVF、V3~V6で陽性P波(P波電気軸+15°~+75° ※ 0°~+90°とする場合もあります)

Ⅲ aVL・V1単独の平坦~陰性P波はOK。
(Ⅲ aVL・V1は正常P波の電気軸からはずれているため)

P波がない場合の鑑別:
洞停止、洞房ブロック、房室接合部調律、心室固有調律、AFL、AF

心房拡大

右房拡大(右房負荷) RAE right atrial enlargement

※洞調律以外の①冠静脈洞調律、②左房調律、③房室接合部調律では心房拡大の評価は出来ません!

心電図所見:
・Ⅱ誘導でP波の高さが2.5mm以上 〈肺性P波〉
・V1誘導でP波の高さが2.0mm以上 〈右心性P波〉
上記のどちらかを満たせば右房拡大となる

右房拡大になる疾患・病態:
PS、TS、TR、ASD、肺塞栓症(急性肺性心)、COPD、Fallot四徴症、Ebstein奇形

左房拡大(左房負荷) LAE left atrial enlargement

心電図所見:
・Ⅱ誘導でP波が二峰性、幅が3mm以上 〈僧帽性P波〉
・V1誘導で陰性P波の幅(mm)×深さ(mm)が1以上 〈左心性P波〉
上記のどちらかを満たせば左房拡大となる

左房拡大になる疾患・病態:
左室肥大、肥大型心筋症、AS、AR、MS、MR、PDA(動脈管開存症)

P波がないもの

P波がないor P波が見えないもの…洞停止、洞房ブロック、AF、AFL、房室接合部調律、心室固有調律、AVNRTなど

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PR

PR時間(間隔) PR interval

P波の始まりからQRSの始まりまで。
心房の脱分極開始から心室の脱分極開始までの時間で房室伝導時間を表します。
正常値 0.12秒≦PR時間<0.20秒
そして通常、この部分の電位はフラットです。

PR時間の短縮

PR時間が短縮する疾患・病態:
1)洞調律…WPW症候群、LGL症候群、交感神経刺激、特発性
2)洞調律でない…房室接合部調律

副伝導路
正常の刺激伝導系ではない、心房と心室をつなぐ経路です。

Kent束…心房と心室を結びます
James束…心房とHis束を結びます(房室結節を通りません)
Mahaim束…房室接合部と心室を結びます

WPW症候群

早期興奮症候群の一つ。
先天的に心房と心室の間に副伝導路であるKent束があります。
通常の刺激伝導に加え、Kent束(副伝導路)を通った刺激が直接心室を収縮させます。
そのため、PRの短縮、デルタ波、幅広いQRSが生じます。(正常伝導系の波形と副伝導路の波形の融合)

心電図所見:
①PR時間<0.12秒
②0.12秒≦QRS
③デルタ波あり
④二次性ST-T変化
⑤ⅡⅢ aVF誘導で深いS波が出ることがある(主にWPW症候群B、C型)

顕性WPW症候群:常にWPW波形がある
間歇(欠)性WPW症候群:一次的にWPW波形が出現

V1誘導のデルタ波(QRS)の向きでA~C型に分類されます。
A型:上向き V1でR>S
B型:下向き V1でR<S
C型:QS型
※V1誘導でR≒SならA型とB型の中間といいます
頻度は A型>B、C型

WPW症候群の鑑別疾患:
LGL症候群、脚ブロック(RBBB→A型、LBBB→B、C型)、心室内伝導障害、心室固有調律、陳旧性後壁梗塞(A型)、陳旧性前壁中隔梗塞(B、C型)

間欠性WPW症候群の鑑別疾患:間欠性脚ブロック、PVC連発

WPW症候群に生じる不整脈
房室回帰性頻拍 (AVRT atrioventricular reciprocating tachycardia)
WPW症候群の約4人に1人がAVRTを生じます。

LGL症候群

早期興奮症候群。
心房とHis束を結ぶJames束(副伝導路)、もしくは房室結節の伝導速度の亢進が原因とされています。
しばしば上室性頻拍や心房細動、心房粗動を生じます。
まれですが心室細動に移行することがあります。

心電図所見:
①PR時間<0.12秒 短縮
②QRS幅は正常
③デルタ波なし

原因:先天性異常

検査:Holter心電図、電気生理学的検査

治療:頻脈発作の停止と予防的な経口薬Ⅰa群、Ⅰc群抗不整脈薬を投与します。

PR時間の延長=1度房室ブロック

1度房室ブロック
心電図所見:
①0.20秒(0.22秒)≦PR時間
②PとQRSが1:1に対応 QRSの脱落はなし

※1度房室ブロックは不整脈の解説で細かく説明します。


今日もお疲れ様でした。
皆さんの心電図ライフに幸あれ。

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