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10回目はST、J点、ST上昇、STが上昇する疾患です。
ST
ST(セグメント)は心室の再分極(プラトー相)を表します。
STは、心室の再分極を表す心電図の重要な指標で、正常なSTは基線に平行です。異常なSTは、心筋の異常(虚血、梗塞など)や他の疾患の兆候となるため、診断において重要な手がかりとなります。
J点 J波
J点とJ波は、心電図における重要な所見で、特に心筋の再分極過程や異常に関連しています。
J点:QRS終末部、STセグメントへの接合部(junctional point)を指す
J波:J点が基線より1mm(0.1mv)以上高い場合に認められる波
ノッチ型:S波の後ろのJ点が上に尖った形になる
スラー型:S波がなく、R波の下降脚に肩を張り出すような形になる
通常は前胸部誘導でみられやすい
J波の原因:早期再分極、低体温、高カルシウム血症、薬剤、くも膜下出血など。
ST上昇
ST上昇の診断基準
基線からST(=J点)の高さを測定します ※aVRを除く
1.V1~V3ではSTの上昇が2mm(0.2mv)以上であることが診断基準
2.それ以外の誘導では1mm(0.1mv)以上
※頻拍時の虚血判定:洞性頻脈、心房頻拍、心房粗動、心房細動時にもST低下、ST上昇をチェックしましょう。発作性上室性頻拍(AVRT、AVNRT)は虚血の判断は難しい時があります。
STが上昇する疾患・病態 初級~中級
①い 異型狭心症
②心 心筋梗塞
③心 心筋炎
④心 心膜炎
⑤タコ たこつぼ型心筋症
⑥ブル Brugada型心電図
⑦震え 低体温
⑧そう 早期再分極(症候群)
⑨さ 左室肥大
⑩蜘蛛 くも膜下出血
⑪さ 左脚ブロック
⑫非 非特異的ST上昇、非特異的ST-T変化
⑬綾(あ) 正常亜(あ)型
⑭WPW WPW症候群
ゴロ STが上昇する疾患・病態 初級~中級
ミサト「①いかり ②シンジ ③シンジ ④シンジッ! ⑤タコ!」
シンジ「⑥ブルッ⑦震え ⑧そう⑨さ どうせ僕なんて⑩蜘蛛⑪さ!(自虐)」
でも、Mのシンジはすぐにすげーテンション上昇 ST上昇
⑫非常口からそっと見守る⑬綾波と⑭エヴァWPW(エヴァの顔)であった
(a)主要 心臓腫瘍
(b)駅 エキノコッカス心嚢胞
(c)流 心室瘤
(d)通 直流通電後
(e)降下 高カリウム血症
(f)去る 心サルコイドーシス
①い 異型狭心症
②心 心筋梗塞
③心 心筋炎
④心 心膜炎
⑤タコ たこつぼ型心筋症
⑥ブル Brugada型心電図
⑦震え 低体温
⑧そう 早期再分極(症候群)
⑨さ 左室肥大
⑩蜘蛛 くも膜下出血
⑪さ 左脚ブロック
⑫非 非特異的ST上昇、非特異的ST-T変化
⑬綾(あ) 正常亜(あ)型
⑭WPW WPW症候群
ゴロ STが上昇する疾患・病態 上級
シンジのエヴァが
(a)主要な(b)駅と靴(c)流(d)通センターに(e)降下して(f)去る
ミサト「①いかり ②シンジ ③シンジ ④シンジッ! ⑤タコ!」
シンジ「⑥ブルッ⑦震え ⑧そう⑨さ どうせ僕なんて⑩蜘蛛⑪さ!(自虐)」
でも、Mのシンジはすぐにすげーテンション上昇 ST上昇
⑫非常口からそっと見守る⑬綾波と⑭エヴァWPW(エヴァの顔)であった
noteに心電図ゴロをまとめました。是非、ご覧ください↓
異型狭心症
異型狭心症(冠攣縮性狭心症)は冠動脈の攣縮によって引き起こされる一時的な血流障害で、発作は通常安静時に生じる。狭心症の中でも特異的な形態をとるため、治療方法や心電図所見において特徴的なものがあります。
心電図所見:
①限局性のST上昇
②異常Q波はない
③ミラーイメージを生じる
④陰性U波が出ることがある
STとTが融合して単相曲線状となることも
心電図の短時間での変化する
検査:ホルター心電図
長時間の心電図記録が可能なホルター心電図を使用して、発作のタイミングと心電図所見を観察します。これにより、異型狭心症の発作の正確な診断が補完されます。
治療:カルシウム拮抗薬、硝酸薬内服
発作時はニトログリセリン舌下投与
心筋梗塞
心筋梗塞については以下のページで説明しています。
急性心筋炎
急性心筋炎は、ウイルスや細菌による心筋感染が原因で発症し、感冒様の前駆症状を経て、心臓に関連する症状が現れます。症状として心不全、不整脈、失神、動悸、胸痛などが現れます。
ⅠⅡaVL・V3〜V6にST上昇がみられます。
発症1週間後にはSTは正常化。
心電図所見:
1.広範囲でST上昇
2.ミラーイメージはない
3.異常Q波
4.R波減高
急性心筋梗塞に似た限局性のST上昇がみられることも。房室ブロックや脚ブロックも。
原因:ウイルス、細菌などの心筋感染。
※心筋炎と心膜炎が同時に発症し、心膜心筋炎となることがあります。
検査所見:血中トロポニンT上昇。心エコーでは壁肥厚と壁運動低下。
鑑別:他のST上昇性疾患との鑑別
心筋梗塞との鑑別が重要ですが、心筋炎にはミラーイメージや陰性T波がない点が異なります。
治療:細菌性心筋炎には抗生剤。ウイルス性心筋炎、アレルギー性心筋炎にはステロイド治療。
急性心膜炎
心膜、心外膜に炎症が生じる疾患。
病変が心筋に強く影響する場合は心筋炎と診断される。(心膜炎と心筋炎の併発も多い)
心電図所見:
1.aVRを除く広範囲で凹型のST上昇
2.広範囲でPRが低下、aVRではPR上昇 ※PR低下が目立たないこともある
(心房筋の炎症がaVRのPR上昇を表し、他の誘導はミラーによるPR低下)
3.ミラーイメージはない
※T波増高はなし
原因:ほとんどがウイルスや細菌感染。(膠原病、悪性腫瘍の心転移なども)
症状:胸痛、発熱など。(胸痛は体位や呼吸で強さが変わります。)
通常、発症数日でST上昇は改善傾向になり、数週~数ヵ月で正常化します。
鑑別:他のST上昇性疾患
心筋梗塞との鑑別点はミラーイメージがない×、異常Q波がない×など
心タンポナーデを生じると緊急処置が必要です。
たこつぼ型心筋症
(一過性に)心尖部の壁運動低下が起こります。
急性心筋梗塞に似た胸痛と心電図変化がありますが、左心室の壁運動異常が1つの冠動脈の支配領域を越えて広く存在し、冠動脈には狭窄がありません。
男女比は約1:8、高齢女性に好発します。
冠動脈造影で心筋梗塞を除外することが重要。
合併症があると予後不良です。そうでなければ通常、数週間で心機能と心電図変化は改善します。
心電図所見:
1.aVR・V1を除く広範囲でSTが上昇
2.aVRでST低下
3.経時変化あり
4.陰性T波
5.QT延長
発症早期に広範囲でSTが上昇します。その後、(巨大)陰性T波を生じます。QT延長が特徴的です。
鏡像変化(-)。通常、異常Q波(-)。
経時変化:発症直後にSTが上昇します。その後STは改善。1~3日で陰性T波を生じ、一旦陰性T波は浅くなりますが、1週間ほどで再びT波は陰転化し、巨大陰性T波となります。
症状:胸痛、呼吸困難
誘因:ストレスなど
鑑別:他のST上昇性疾患
心筋梗塞との鑑別点はミラーイメージがない×、異常Q波がない×など
治療:急性期はCCUにて経過観察を行います。特効薬はありません。
流出路圧較差を生じる例ではβ遮断薬が効果的です。
予後:再発は約4%です。低血圧例、流出路圧較差を有する例、心破裂例では予後不良です。
ER心電図基本編の選択肢と解答を作り、noteにまとめました。
下記から是非、見にきてくださいね。
Brugada型心電図 Brugada症候群
心電図所見:
1.V1~V3のいずれかでJ点が2mm(0.2mv)以上になるST上昇
2.rsR´様のQRS
Brugada型心電図はcoved型とsaddle back型に分類されます。
coved型
type1:coved型 2mm(0.2mv)以上のST上昇と陰性T波
saddle back型
type2:saddle back型 1mm(0.1mv)以上のST上昇
type3:saddle back型 1mm(0.1mv)未満のST上昇
※心電図用紙のV5V6のJ点からV1まで垂直に線を引くとJ点の上昇を確認しやすい。
saddle back型よりcoved型の方が危険性が高い。
鑑別(心電図所見):右脚ブロック、心筋梗塞、心膜炎、心筋炎、たこつぼ型心筋症
Brugada型心電図の全てがBrugada症候群ではありません。以下の通りです。
Brugada症候群の診断
・coved型はそれのみでBrugada症候群と診断されます。
・saddle back型は以下のいずれかを満たすとBrugada症候群と診断されます。
1.家系内に45歳未満の突然死やcoved型の人がいる
2.心室頻拍や心室細動の既往がある
3.失神歴がある(他疾患を除外)
4.心臓電気生理学的検査で心室頻拍や心室細動が誘発される
全突然死の約4%がBrugada症候群と言われています。
冠動脈造影、心エコー、心筋シンチでは異常ありません。
心室細動により突然死する可能性があります。
治療:植え込み型除細動器(ICD)
低体温
深部体温が35℃以下になる状態を指します。
低体温では徐脈や心停止が起こりやすく、心電図ではOsborn波(J波)とST上昇が見られることがあります。場合によってはOsborn波のみが観察されることもあります。これらの波形はV3、V4でよく確認されます。
※Rsr’(rsR’)パターンが見られることもあります。
著しい低体温(特に32度以下)は心室内伝導遅延が生じます。
低体温によるJ波の正確な成因は不明です。
低体温の影響で、その他にも以下のような心電図異常が現れることがあります。
洞徐脈、房室接合部調律、PR時間の延長、QT時間の延長、陰性T波、重篤な不整脈など。直腸温が28度以下になると心室細動(VF)が発生することもあります。
早期再分極
心電図所見:
1.aVR誘導を除く、ⅠⅡⅢaVLaVF・V1~V6の2つ以上の誘導でJ波(高さ1mm以上、ノッチやスラー)を認める。
2.T波が増高する。
3.V4~V6でR波が増高する。(左室高電位ではなく、早期再分極の所見の1つ)
波形は日内変動する。
mirror imageはなし。
早期再分極に心室細動などを伴うと「早期再分極症候群」になります。
健診で早期再分極が認められた場合、失神歴や家族に突然死の既往がなければ、心室細動発生のリスクは低いので、不安を与えないよう配慮します。
鑑別(心電図所見):心筋梗塞、心筋炎、心膜炎、正常亜型(Ⅲ、aVLでのQRSノッチ)
各鑑別疾患の特徴
・心筋梗塞は胸痛があり、心電図で急速な波形の変化や鏡像変化が見られます。血液検査でトロポニンT、CK-MBの上昇を認めます。
・心膜炎はaVRとV1を除く広範囲でST上昇が見られ、aVRを除く広い範囲でPRが低下します。
胸痛や心膜摩擦音が認められ、心エコーで心膜液貯留が確認されます。
・Ⅲ、aVLの正常幅のQRSノッチは早期再分極と類似します。V4からV6のJ波が早期再分極の決め手になります。
胸痛とST上昇がある疾患・病態
1.急性心筋梗塞
2.異型狭心症
3.急性心膜炎
4.たこつぼ型心筋症
※どんな不整脈でも不整脈自体によるST上昇は起きません。(PSVTなどでST低下が起こることはあります)
くも膜下出血
心電図所見:様々な心電図変化を生じる、ST上昇、ST低下、T波増高、陰性T波、QT延長など (異常Q波はほとんどない!)
非特異的ST-T変化(異常)
非特異的ST-T変化とは、病的意義のないST上昇や低下、陰性T波、フラットT波を指します。
非特異的ST-T変化の原因:
若年者、自律神経失調症、生理的なもの、低体温、中高年女性
明確な診断基準と治療はありません。
ゴロ 非特異的ST-T変化(異常)
①非特異 ②的 ③ST ④T 変化(異常)
①若年者(“非”と”若”は字が似ている)
②自律神経失調症(“的”と”自”は字が似ている)
③生理的(SeiriTeki)
④低体温(Teitaion)
二次性ST-T変化
◦ST-TとはSTとT波を指します。
二次性ST-T変化は、心室の興奮伝導過程の変化によって起こります。(一方、一次性ST-T変化は心筋細胞の再分極異常によるものです。)
この変化では、ST-TがQRS波形と逆向きになります。また、QRS波形が幅広くなるのが特徴です。
二次性ST-T変化がある疾患・病態:
WPW症候群、脚ブロック、心室ペーシング
お疲れさまでした。
STは心電図のヤマです。ここが分かると心電図がぐっと身近になります。次回はST低下です。
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