※プロモーションを含みます
6回目はQ波、心筋梗塞(前半)です。
Q波
R波の前にある陰性波。
正常Q波
幅が1mm(0.04秒)未満、深さがR波の1/4未満。(幅1mm未満、深さ1mm未満という基準もあり)
ⅠaVL・V5V6でみられるsmall q波(中隔性q波)は正常です。これは心室中隔の興奮を示します。
異常Q波

異常Q波の基準は以下
1.Q波の幅が1mm以上、かつ深さがR波の1/4以上 (深さ1mm以上という基準もあり)
2.V1~V3のq波(大きさに関わらず)は異常Q波と見なされる
3.QS型のQRS
※異常Q波が見られる場合、必ず左脚ブロックとWPW症候群を除外します。
例外としてⅢのみ、aVLのみに見られる異常Q波は病的意義はないとされています。(ⅢやaVLは正常QRS電気軸のはずれにあるため。)
ゴロ q波・Q波が出現する疾患
エヴァンゲリ〇ン新劇場版Q
ミサト「①シンジ、②シンジ、③シンジ、④シンジ!!大変よ!」
そこには
⑤右胸心で⑥COPDで⑦肥満で⑧左脚がレゴブロックのエヴァ(⑨WPW←エヴァの顔)が!!
①心筋梗塞
②心筋炎
③心筋症
④心室肥大(左室肥大)
⑤右胸心
⑥COPD
⑦肥満 ⅡⅢaVFに出ることあり
⑧左脚ブロック
⑨WPW症候群(C型)
+α心室瘤、アミロイドーシス、やせ型(aVLに出ることあり)

noteに心電図ゴロをまとめました。是非、ご覧ください↓

急性冠症候群 ACS acute coronary syndrome
急性心筋梗塞や不安定狭心症は、冠動脈プラークの破綻や血栓によって冠動脈が高度に狭窄・閉塞し、心筋が虚血および壊死に至る病態です。これらを総称して急性冠症候群(ACS acute coronary syndrome)と呼びます。

ACSの初期治療
基本はMONA(ゴロ)で覚えます
M morphine モルヒネ静注
O oxygen 酸素投与
N nitroglycerin ニトログリセリン舌下
A aspirin アスピリン投与
バイアスピリン100mgまたはバファリン81mgを2錠かみ砕いて服用
STEMIならカテ室直行!
NSTE-ACSの場合
早期の心カテが必要なNSTE-ACSには以下のケースがあります
・トロポニン上昇を伴うNSTEMI
・薬剤コントロール不良のもの
・安静時胸痛の再発
・広範囲で高度なST低下
・非持続性心室頻拍の多発や持続性心室頻拍・細動
ACSの根本的治療
1.経皮的冠動脈形成術(PTCA)=経皮的冠動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)
2.経静脈的血栓溶解療法(intravenous thrombolytic therapy,thrombolysis)
3.冠動脈バイパス術(CABG:coronary artery bypass grafting)
日本では圧倒的に1のPCIが多く行われています。
心筋梗塞 MI:myocardial infarction
冠動脈の閉塞により心筋が壊死を起こす疾患です。
通常、突然の胸痛を伴い、心電図に特徴的な所見が現れます。急性期には不整脈、心原性ショック、心臓破裂、心不全などの危険な合併症が発生しやすく、死亡率も高いため、迅速かつ適切な診断とな治療が求められます。
診断のポイント:
ST上昇、異常Q波、冠性T波
※頻拍時の虚血判定
洞性頻脈、心房頻拍、心房粗動、心房細動時のST低下やST上昇もチェックします。発作性上室性頻拍(AVRT、AVNRT)では虚血の判断が難しいことがあります。
原因疾患:冠動脈硬化、冠攣縮、冠動脈塞栓など。
鑑別:
異常Q波 特発性心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症)、二次性心筋症(筋ジストロフィー、アミロイドーシス)
ST上昇 急性心膜炎、異型狭心症
脳血管障害(特にくも膜下出血)
検査:
血液検査 CPK、AST、LDH、白血球数 心筋壊死の指標
胸部X線、心エコー、血液ガス、心筋シンチグラフィー
頻回に心電図を記録し、経過を観察します。
処置:
CCU管理
心筋梗塞による合併症(不整脈、心不全、ショック、心破裂、血栓塞栓症、急性心膜炎など)の治療と予防。
治療:
合併症(不整脈、心不全、ショック)への対応。
冠血行再建術 PTCA(経皮的冠動脈形成術)、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)など。
薬物療法 亜硝酸剤、抗凝固剤など。
STEMIとNSTEMI
①STEMI(ST上昇型心筋梗塞)
心不全や心原性ショック、重症不整脈を合併しやすい。
②NSTEMI(非ST上昇型心筋梗塞)
ST上昇がないものの、トロポニンなど心筋逸脱酵素の上昇が認められる。
梗塞部位
遠位から近位に向かって、梗塞部(壊死部)、傷害部、虚血部、正常部へと移行します。
心筋梗塞の時期分類
1.急性期(急性心筋梗塞 AMI acute myocardial infarction)
発症から1週間以内。最も治療が重要な時期です。
2.亜急性期(亜急性心筋梗塞 RMI recent myocardial infarction)
発症1週間から1ヵ月まで。心筋の回復過程や合併症のリスクに注意が必要です。
3.陳旧性期(陳旧性心筋梗塞 OMI old myocardial infarction)
発症から1ヵ月以上。心筋梗塞後の回復が進み、後遺症や慢性合併症の管理が求められます。
※上記の急性期内でもさらに以下のように分類されます
1.超急性期…発症から2時間以内
2.急性期…2~24時間
3.亜急性期…24時間~7日
ミラーイメージ reciprocal change
心筋梗塞によってST上昇が見られる誘導の対側(反対側)にST低下が見られる現象を指します。この現象は心筋梗塞に特有で、他のST上昇を示す疾患との鑑別に有用です。
前壁中隔梗塞はV1~V4でST上昇が見られ、ミラーイメージとしてⅡⅢaVFでST低下が見られることがあります。(低下しないこともあります)
側壁梗塞はⅠaVL・V5V6でST上昇が見られ、ⅡⅢaVFでST低下が見られることがあります。(〃)
下壁梗塞はⅡⅢaVFでST上昇が見られ、ⅠaVL・V1~V6でST低下が見られることがあります。(〃)
後壁梗塞はV7~V9でST上昇が見られ、V1~V3でST低下が見られることがあります。(〃)
このミラーイメージにより、梗塞部位を特定しやすくなり、診断の助けとなります。
心筋梗塞の心電図変化
※ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の場合

ゴロ 心筋梗塞の心電図変化
新規の ええしご と 数時間からスタートして日給で、1週間で完成 (実際はブラック業務で)2週間でステる
心筋梗塞 ECG T↑ 数時間でST↑、約1日で異常Q波、1週間で冠性T波 2週間でST(戻)る
発症直後~数時間:T波上昇、ST上昇
数時間~1日:異常Q波の出現
約3日:ST改善傾向
2日~1週間:冠性T波が出現
約2週間:STの正常化
数ヵ月:T波の正常化
1年以上:異常Q波が残る
注意点:
発症直後から数時間の間にT波上昇が見られた場合、トロポニンTやCK-MBなどの心筋酵素はまだ上昇しないことがあります。これは心筋梗塞の超急性期に見られる特徴です。
小さなr波が残る場合や、特に前壁梗塞(陳旧性心筋梗塞)では、V1~V3で「poor r-wave progression」のみが見られることがあります。この場合、異常Q波が出現しないことがあります。
心内膜下梗塞や後壁梗塞は、上記の心電図変化と異なるパターンを示します。
心内膜下梗塞の心電図変化
心内膜下梗塞では、通常の心筋梗塞と異なる心電図所見が見られます。特に以下の変化が特徴的です。
1.ST低下
心内膜下梗塞では、ST低下が主に見られます。ST上昇が観察される通常の心筋梗塞とは異なり、ST低下が中心となることが多いです。
2.陰性T波
T波が陰性になることが多く、これは梗塞の進行と関連しています。特に心内膜下の梗塞では、深い陰性T波が観察されることがよくあります。
3.QT時間延長
心内膜下梗塞では、QT時間の延長が見られることがあります。これは心筋の電気的な回復が遅延していることを示唆します。
※心内膜下梗塞に異常Q波は出現しないと考えて大丈夫です。
これらの心電図所見は、心内膜下梗塞を疑う際の重要な手がかりとなります。ST低下や陰性T波、QT時間の延長が特徴的であり、他のタイプの心筋梗塞との鑑別に役立ちます。
後壁梗塞の心電図変化
1.V1~V3でST低下
ST低下がV1~V3で観察されます。このST低下は、後壁梗塞によるST上昇のミラーイメージです。
2.R波の増高
R波の増高も後壁梗塞の特徴的な所見です。V1でR波が5mm以上、またはS波<R波になります。これは異常Q波のミラーイメージです。
3.高いT波
T波が高くなることがあります。これは、後壁梗塞による冠性T波のミラーイメージです。
また、後壁梗塞の心電図所見が”移行帯がV1、V2のみ”ということもあります。(亜急性期、陳旧性期)
もちろん背部誘導(V7~V9)を使用すると、後壁梗塞のST上昇や異常Q波を観察できます。
後壁梗塞は、心電図でのST低下やR波増高、高いT波などが特徴であり、特に他の梗塞とミラーイメージで変化が見られるため、正確な診断には複数の誘導を考慮することが重要です。
非ST上昇型心筋梗塞 NSTEMI=非Q波心筋梗塞≒心内膜下梗塞
心電図所見:
1.ST上昇なし
2.異常Q波なし
3.陰性T波あり
4.R波減高あり
急性期では、通常の心筋梗塞と同様の症状や心筋マーカーの上昇が見られます。一方、その後の経過で異常Q波は生じず、R波の減高と陰性T波を認めます。
NSTEMIは虚血が比較的短時間で解除された場合や、もともと側副血行路が発達している部位に梗塞が発生した場合に認められることが多いです。
以前は異常Q波が出現する心筋梗塞を「貫璧性梗塞」と、異常Q波が出現しない心筋梗塞を「心内膜下梗塞」と区別していました。現在は必ずしも一致しないとされています。
NSTEMIはSTEMIと比較して、心電図所見が軽微であり、異常Q波の発生がないため、診断には注意が必要です。虚血の解除が早い場合や側副血行路が発達している部位で発生することが多いとされています。
今日はここまでです。
皆さん、お疲れ様でした。
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