今回は不整脈⑨ 房室ブロックです。
房室ブロック AVB atrioventricular block
心房と心室間の刺激伝導の障害。
1~3度に分類されます。
1度…PR時間が延長する
2度…時々、QRSが脱落する
3度…P波とQRSが完全に独立して出現する
1度房室ブロック
房室伝導時間(心房から心室への伝導時間)が延長します。
P波とQRSの伝導比は1対1です。
心電図所見:
①基本は洞調律、PP間隔は一定
②0.24秒(0.20秒)≦PR時間
③QRSは正常
通常、自覚症状はありません。
原因:冠動脈疾患(右冠動脈が房室結節を灌流するため)、ジギタリス、Ca拮抗薬、β遮断薬、副交感神経刺激など。
検査:基礎疾患の検索、Holter心電図、His束電位図。
治療:通常、治療の必要はありません。
2度房室ブロック
時々QRSが脱落します。
Wenckebach型2度房室ブロック、MobitzⅡ型 2度房室ブロック、2:1房室ブロックなどがあります。
Wenckebach型2度房室ブロック
心室への刺激の一部がブロックされます。
PP間隔は一定で、PR時間が徐々に延長しQRSが脱落します。
心電図所見:
①基本は洞調律、PP間隔は一定
②PR時間が徐々に延長し、QRSが脱落する
③QRS幅は正常
原因:冠動脈疾患、Ca拮抗薬、β遮断薬、副交感神経刺激など。
検査:基礎疾患の検索、Holter心電図、His束電位図によるブロック部位診断。
治療:症状がない場合は治療の必要はありません。
失神やめまい、息切れなどの徐脈症状がある場合、アトロピン、体外式ペーシング、昇圧剤などを使用します。
MobitzⅡ型 2度房室ブロック
心室への刺激の多くがブロックされます。
PR時間は一定。
His束や脚部に伝導障害。His束内の障害ではQRS幅は狭く、His束下(脚部)の障害ではQRS幅は広くなります。
MobitzⅡ型2度房室ブロックは3度房室ブロックに進行するおそれがあります。
1)His束内(BH)ブロック:narrow QRS
2)His束下(HV)ブロック:wide QRS
心電図所見:
①基本は洞調律、PP間隔は一定
②PR時間は一定のまま、突然QRSがする
③narrow QRS、wide QRSの2パターンがある
※MobitzⅡ型2度房室ブロックは伝導途絶の頻度が少ない場合は徐脈にならず無症状ですが、BH or VHの器質的障害を意味し、2:1房室ブロック、高度房室ブロック、3度房室ブロックへ移行します。
原因:Wenckebach型と異なり、ほとんどの場合器質的心疾患を伴います。先天性心疾患。冠動脈疾患。
検査:基礎疾患の検索、Holter心電図、His束電位図によるブロック部位診断。
治療:薬剤、心筋虚血などの一過性の原因があれば、その治療を行います。
アトロピンはP波を増加させますが、障害された脚がその興奮頻度に応答できなくなり(QRSが減少)、さらに心室レートが低下するおそれがあり、wide QRSのMobitzⅡ型には推奨されません。
昇圧剤を使用することもあります。
再発性や不可逆的である場合は植込み型ペースメーカーの適応になります。
2:1房室ブロック
P波2つに対してQRS波が1つの房室ブロック。
心電図所見:
①基本は洞調律、PP間隔は一定
②PR時間一定(完全房室ブロックとの鑑別点)
③P波2拍に対しQRSが1拍出現する
高度房室ブロック
分類上は2度房室ブロックに含まれます。(2度房室ブロックとは別という考えもあります)
通常、房室伝導比が3:1以下のもの。3:1、4:1など。
(例)高度房室ブロック:房室伝導比が3:1
P波3拍に対しQRSが1拍の房室ブロック。
心電図所見:
①基本は洞調律、PP間隔は一定
②PR時間一定(完全房室ブロックとの鑑別点)
③3拍以上のP波に対しQRSが1拍出現する
※一見、3度房室ブロックのようでも、一部で伝導がつながっている場合は高度房室ブロックになります。
3度房室ブロック(完全房室ブロック)
房室伝導が完全にブロックされます。
房室解離(atrioventricular dissociation)が起こります、つまり心房と心室が別々に興奮します。
房室接合部調律や心室調律となりHRは低下します。(刺激発生源が下位ほど徐脈)
ブロック部位が房室接合部の場合はQRS幅が狭く、HRは40~60/分です。
ブロック部位が脚部の場合はQRS幅が広く、HRは40/分未満です。
3度房室ブロックは重篤で、心静止になることもあります。
心電図所見:
①基本は洞調律、PP間隔は一定
②P波とQRSがバラバラに出現
③RR間隔は一定
④R rate< P rate
⑤narrow QRS、wide QRSの2パターンがある
ⅰ)narrow QRS
房室接合部調律 ブロック部位:房室接合部(房室結節、His束)
HRは40~60/分程度。
ⅱ)wide QRS
心室固有調律 ブロック部位:His束下(脚部)
HRは20~40/分程度。
原因:先天性心疾患、冠動脈疾患。
鑑別:2度房室ブロック、等頻度房室解離。
検査:基礎心疾患の検索、Holter心電図、His束電位図によるブロック部位の診断。
HRが40/分以下になると心拍出量が大きく低下しAdams-Stokes発作を起こすことがあります。
急性心筋梗塞に3度房室ブロックを合併すると心停止になることもあります。
治療:失神、心不全などの徐脈に伴う症状を有する場合は入院が必要です。
植込み型ペースメーカーの適応になります。
ペースメーカー植込み術までの間、一時的ペースメーカーも検討します。
発作性房室ブロック
突如、数秒間房室ブロックが起こり、その後改善します。
心電図上、突然、P波のみの波形になりますがすぐ戻ります。
今回はだいぶ長かったですね。
お疲れ様でした。
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