心電図⑤ PR PR時間 WPW症候群 LGL症候群

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5回目はPR、PR時間、WPW症候群、LGL症候群です。

PR

PR時間 PR interval

P波の始まりからQRSの始まりまでの時間。
心房の脱分極開始から心室の脱分極開始までの時間を示します。これは房室伝導時間を表しています。
※通常、全誘導中で最も長いPR時間を採用します。
PR時間の正常値 0.12秒~0.20秒
この部分の電位は通常フラットです。

PR時間の短縮

PR時間が短縮する疾患・病態

1.洞調律…WPW症候群、LGL症候群、交感神経刺激、特発性のもの
2.洞調律でない…房室接合部調律

副伝導路
正常の刺激伝導系とは異なり、心房と心室をつなぐ経路です。

Kent束…心房と心室を直接つなぐ副伝導路。
James束…心房とHis束をつなぐ副伝導路。(房室結節を経由しません。)
Mahaim束…房室接合部と心室をつなぐ副伝導路。

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WPW症候群

WPW症候群は早期興奮症候群の一つです。
先天的に心房と心室を直接つなぐ副伝導路であるKent束が存在します。
この副伝導路により、通常の刺激伝導に加えて、Kent束を通って心室が早期に興奮するため、以下の心電図所見が見られます。

心電図所見:
1.PR時間<0.12秒
2.デルタ波あり
3.0.12秒≦QRS
4.二次性ST-T変化
5.ⅡⅢ aVFで深いS波が出ることがある(主にWPW症候群B、C型)

・出現頻度による分類
顕性WPW症候群:常にデルタ波が存在
間歇性(間欠性)WPW症候群:一次的にデルタ波が出現

V1誘導の波形でA~C型に分類できます。※海外ではA型とB型のみ。
A型:R型 V1でR>S
B型:rS型 V1でR<S
C型:QS型、QR型
※R≒SならA型とB型の中間になります
頻度は A型>B、C型

Kent束の位置の目安
A型は左側、B型は右側、C型は中隔となることが多い。

WPW症候群の鑑別疾患:
LGL症候群、脚ブロック(RBBB→A型、LBBB→B、C型)、心室内伝導障害

間欠性WPW症候群の鑑別疾患:間欠性脚ブロック、PVC連発

WPW症候群に生じる不整脈
房室回帰性頻拍 (AVRT atrioventricular reciprocating tachycardia)
WPW症候群の約4人に1人がAVRTを生じます。

LGL症候群

LGL症候群は早期興奮症候群の一つです。
心房とHis束を直接結ぶ副伝導路であるJames束が原因と考えられています。ただし、房室結節の伝導速度の亢進が原因とする説もあります。
LGL症候群では、しばしば上室性頻拍や心房細動、心房粗動を生じます。
まれに心室細動になることがあります。

心電図所見:
1.PR時間<0.12秒 短縮
2.デルタ波なし
3.QRS幅は正常

原因:先天性異常

検査:Holter心電図、電気生理学的検査

治療:頻脈発作の停止。予防としてⅠa群、Ⅰc群抗不整脈薬を内服。

PR時間の延長=1度房室ブロック

1度房室ブロック

心電図所見:
1.0.20秒(0.22秒)≦PR時間
2.P波とQRSが1:1に対応し、QRSの脱落はなし

※1度房室ブロックについては、不整脈の解説でさらに詳細に説明します。


今日もお疲れ様でした。
皆さんの心電図ライフに幸あれ。

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