不整脈3回目は発作性上室性頻拍、心房頻拍です。
発作性上室性頻拍 PSVT SVT
発作性上室性頻拍 (PSVT,paroxysmal supraventricular tachycardia)
発生場所と原因:
心房内や房室接合部で約150~200/分で刺激が発生。
原因の多くはリエントリー。
鑑別:ST、AFLなど
PSVT・AT・AFLの鑑別(ATP負荷試験):
アデノシン三リン酸(ATP:アデホス)の静注により、一過性に房室伝導ブロックが生じる(約10秒程度)。
この作用を利用して頻拍の鑑別を行う。
反応の違い
PSVT:頻拍は停止する
AT・AFL:頻拍は停止せず、心房活動のみが明瞭化する
波形の特徴
規則的なP波 → AT
鋸歯状波 → AFL
ATPはPSVTの診断補助と同時に治療的効果も持つ。
PSVTの急性期治療:
ATP(アデノシン)静注(第一選択)
ベラパミル(静注または内服)
PSVTの再発予防:
Ca拮抗薬(ベラパミルなど)
I群抗不整脈薬(ジソピラミドなど)
必要に応じてカテーテルアブレーション
房室回帰性頻拍 AVRT atrioventricular reciprocating tachycardia
Kent束・心房・房室結節・心室の旋回経路があり頻拍発作を生じます。
順方向性(正方向性)房室回帰性頻拍(Orthodromic AVRT,ORT)
AVRTの約90%は順方向性AVRTです。
刺激は房室結節を順行性(心房→心室)に伝導し、副伝導路(Kent束)を逆行性(心室→心房)に伝わります。


心電図所見:
・HRは約150~220/分
・narrow QRS regular tachycardia
・RR間隔は一定
・ⅡⅢaVF誘導で逆行性P波(陰性P波)がQRSの直後に出現
※逆行性P波は不明瞭なことも多い
原因:副伝導路(Kent束) WPW症候群に関連
鑑別:AVNRT、洞性頻脈(ST)、心房頻拍(AT)、心房粗動(AFL)
治療:
急性期
ATP静注、β遮断薬(プロプラノロール、アテノロール)、Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)、Ⅰa/Ⅰc群抗不整脈薬
根治療法
カテーテルアブレーション
逆方向性房室回帰性頻拍(Antidromic AVRT,ART)
AVRTの約10%を占めます。
順方向性AVRTとは逆に、刺激が伝わります。
心電図所見:
・HRは約150~250/分
・wide QRS regular tachycardia
・RR間隔は一定
・デルタ波様の波形を呈する
原因:副伝導路(Kent束) WPW症候群に関連
鑑別:心室頻拍(VT)、変行伝導を伴う上室性頻拍
治療:
急性期
ATP静注、β遮断薬(プロプラノロール、アテノロール)、Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)、Ⅰa/Ⅰc群抗不整脈薬
根治療法
カテーテルアブレーション
房室結節リエントリー性頻拍(Atrioventricular nodal reentrant tachycardia,AVNRT)
約80%がcommon type(通常型)、約20%がuncommon type(非通常型)
房室結節を含む二重伝導路(slow/fast)によるリエントリーで生じる。

ⅰ)common type(通常型,slow/fast)
slow pathwayを順行性、fast pathwayを逆行性に伝導します。
突然発症し、突然停止します。

心電図所見:
・HRは約150~200/分
・narrow QRS regular tachycardia
・short RP’ tachycardia(P’R>RP’)
P波の特徴
・約半数でQRSに重なり不明瞭
・約半数で偽性s波(ⅡⅢaVF)として出現
・V1で偽性r´波として出現することがある
・偽性q波はまれ
ii) uncommon type(非通常型)①fast/slow型
心電図所見:
・narrow QRS regular tachycardia
・long RP´ tachycardia(P´R<RP´)
ii) uncommon type(非通常型) ②slow/slow型
心電図所見:
・narrow QRS regular tachycardia
・short RP´ tachycardia(P´R>RP´)
AVNRT全体の原因や治療
原因:房室結節二重伝導路(slow-fast間のリエントリーなど)
鑑別:AVRT、洞性頻脈(ST)、心房頻拍(AT)、心房粗動(AFL)
治療:
急性期
ATP静注、β遮断薬、Ca拮抗薬
根治療法
カテーテルアブレーション(成功率95%以上)
☆AVRTとAVNRTの鑑別(重要まとめ)
AVRT
・ORT(順方向性AVRT)はQRS直後に逆行性P´波(ⅡⅢaVFで陰性)
・ART(逆方向性AVRT)はwide QRS tachycardia、副伝導路を順行伝導(デルタ波様)
AVNRT
・common type(通常型,slow/fast)
P´波が見えない(最多)
偽性s波(ⅡⅢaVF)
偽性r´波(V1)
・uncommon type
①fast/slow型
long RP´ tachycardia(P´R<RP´)
②slow/slow型
short RP´ tachycardia(P´R>RP´)
*AVRTはaVRでST上昇を伴うことがある。
(覚え方 AVRT→aVRでST上昇! AVRの文字が共通!)
洞結節リエントリー性頻拍 (SNRT,sinus nodal reentrant tachycardia)
まれな上室性頻拍。洞結節と周囲心房筋のリエントリーにより発生する。
心電図は洞調律とほぼ同じP波を示し、HRは100〜150/分程度の規則性頻拍となる。
突然発症・突然停止を示す点が特徴で、洞性頻脈やATとの鑑別が重要。
心室内変行伝導を伴うPSVT
平常時に伝導障害(脚ブロック)がなくても、頻拍により不応期の関係で心室内変行伝導(右脚ブロック型、左脚ブロック型)となることがあります。
右脚ブロック、右軸偏位になりやすいのは、右脚の不応期が左脚より長いためです。これは機能的ブロックと呼ばれ、病的意義はありません。
脚ブロックを伴うPSVT wide QRS
右脚(左脚)ブロックにPSVTが合併したもの
3.5mm(0.14秒)以上のwide QRS regular tachycardiaであり、心室内変行伝導を伴うPSVTやVTとの鑑別が必要。
頻拍となり、右脚または左脚の不応期よりも頻拍周期が短くなると、それぞれ右脚ブロック、左脚ブロックとなります。右脚の不応期は長いため右脚ブロック型が多いです。
鑑別:VT (VTと脚ブロックを伴うPSVTとの鑑別は困難なことがあります。)
治療:迷走神経刺激、ATP(アデノシン三リン酸)5~20mg静注。鑑別が困難な場合は直流通電を行います。
心房頻拍(AT atrial tachycardia)と房室接合部頻拍(JT junctional tachycardia)
心房頻拍(AT)…心房で刺激が発生します
房室接合部頻拍(JT)…房室接合部(主にHis束)で刺激が発生します
ATとJTの鑑別にはP波の形やPR時間を見ます。
PSVTとVTの鑑別方法
◦QRS幅 QRS幅が0.16秒以上ならばほぼVTと診断
◦房室解離 R rate<P rateなら房室解離がありVTと診断
◦心室捕捉(捕捉収縮) (ventricular) capture beat wideQRSの間に洞調律があればVTと診断
◦融合収縮 洞調律とVTの融合が見られたらVT
◦左軸偏位(-30°~-90°)、北西軸(-90°~-180°)であればVTの可能性が高い
◦脚ブロックの形 通常の脚ブロック波形と異なり、変形している場合、VTの可能性が高い
◦V1での下りカーブ 左脚ブロック型の場合、r波からS波への下りカーブが緩やかであるとVTの可能性が高い
◦洞調律時の波形
右脚ブロック型や左脚ブロック型となりQRSの立ち上がりは鋭い。一方でVTの多くはQRSの立ち上がりは鋭くないです。
右脚ブロック型は鋭いR波があるため上室性と診断しやすい。左脚ブロック型はwide QRS となります。
V1、V6で脚ブロックの形が崩れているならVTの可能性が高い。(PSVTでは典型的な脚ブロックの形になります。)
房室解離や心室捕捉があればVTと診断できます。P波があれば房室解離があります。
血行動態が保たれているwide QRSの頻拍にはATPを投与します。ATP投与後に洞調律に戻れば発作性上室性頻拍と判定できます。
心房頻拍 (AT,atrial tachycardia)=発作性心房頻拍 (PAT ,paroxysmal atrial tachycardia)
心房頻拍には洞結節リエントリー型、心房内リエントリー型、心房自動能亢進型があります。
1)単源性心房頻拍、多源性心房頻拍 (MAT,multifocal atrial tachycardia)
2)房室伝導比一定のAT、房室伝導比不定のAT
心房で異所性刺激が発生し、頻拍が生じます。
心房拍数は100~250/分、HRは100~200/分
⇐明らかな粗動波が見られても、粗動波数が250/分未満ならATと分類されます。
HRは80~90/分になることもあります。
刺激発生部位が洞結節に近い場合、洞性頻脈 や洞調律 と紛らわしいことがあります。
ATとSTの鑑別方法は、P波の形の違いを見ることです。発作時のホルター心電図や12誘導心電図を詳細に見なることで判別できます。
なかには、ATと診断されず心療内科に紹介されることもあります。
心電図所見:
1.洞調律と異なる形のP´波(異所性P波)が出現
2.QRS数<P´波数
3.P´R時間は計測不能のことが多い
4.RR間隔は一定または不定
narrow QRS regular tachycardiaとnarrow QRS irregular tachycardiaがある
⑤QRS幅<0.10秒
※多源性心房調律や多源性心房性期外収縮3連発以上がHR100/分以上になるとMATと診断されます!
鑑別:SR、ST、AFL、AF
治療:
薬剤(リエントリーによるATにはⅠa群やⅠc群抗不整脈薬、自動能の亢進によるATにはβ遮断薬)
カテーテルアブレーション(根治率90%以上)
PAT(AT) with block
⇒房室ブロックを伴ったPAT(AT)
心房拍数が多くなると(例 心房拍数200/分以上)、刺激が全て心室に伝わらず房室ブロックを生じます。伝導比は様々です。
Wenckebach周期(徐々にPR間隔が延長してQRSが脱落する)となることもあります。
ジギタリス中毒でみられやすい。
2:1伝導のAT
⇒2:1房室ブロックを伴ったAT
例えばP波が180/分、QRSが90/分出現するものをいいます。
鑑別 ST、AFL、AF、2:1AVB
多源性心房頻拍 MAT multifocal atrial tachycardia
心房内の複数で異所性自動能の亢進が起こります。
発症の背景に慢性肺疾患などがあります。
心電図所見:
1.3種類以上のP波がある
2.RR間隔は不整
COPDなどの肺疾患が基礎にあることが多い
房室接合部頻拍 JT junctional tachycardia
まれな疾患
鑑別:AVNRT、ST
皆さん、今日もお疲れ様でした。



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