不整脈④ 心房粗動 心房細動 偽性心室頻拍(pseudo VT)


不整脈4回目は心房粗動、心房細動、偽性心室頻拍(pseudo VT)です。

心房粗動 AFL atrial flutter

心房で興奮が旋回します。心房のマクロリエントリーに起因します。
心房細動と機序は異なりますが、互いに移行することがあり両者の関係は深い。

◦common type AFL…刺激が三尖弁輪を旋回します。
下記①②の2種類があります。
心室側から三尖弁を見上げて
①反時計方向:順方向
②時計方向:逆方向

◦uncommon type AFL…刺激が三尖弁輪以外を旋回します。

心房興奮はF波(粗動波)として現われます。
多数の興奮は房室結節を通過出来ず2:1 ~4:1伝導になりやすい。
2:1伝導ではF波はT波と重なり、PSVTと鑑別が必要です。

心電図所見:
①ⅡⅢaVFでF波がみられる (V1でみられることも)
②F波数は250~350/分
※F波数が250/分未満の場合は心房粗動の波形であっても心房頻拍とすることが多い
③伝導比は一定(2:1~4:1が多い)の場合と不定の場合がある
④HR約75~150/分

※common type AFL 反時計方向=順方向…ⅡⅢaVFで陰性F波、V1で陽性F波
 common type AFL 時計方向=逆方向…ⅡⅢaVFで陰性F波、V1で陽性F波

鑑別:
伝導比が一定のAFL → ST、AT、PSVT
伝導比が不定のAFL → AF

検査:
心不全の有無を確認
胸部X-p、心エコー、血液検査など(基礎疾患の検索)

治療:
発作停止
 薬剤による停止
 静注:プロカインアミド(アミサリン)、ジソピラミド(リスモダンP)
 経口:キニジン(キニジン)、ジソピラミド(リスモダン)
 心房ペーシング(心内ならびに経食道ペーシング)
 直流通電
抗不整脈薬Ⅰa群、Ⅰc群の効果は高くありません。カルディオバージョン、房室伝導を抑制するβ遮断薬でレートコントロールを行います。 
血栓予防のために抗凝固薬を使用します。
カテーテルアブレーションによる根治率は95~97%と非常に高い。

心房細動 AF atrial fibrillation

心房の興奮が一定の秩序を失った状態で心房が機能不全に陥ります。
心房内で多数のマイクロリエントリーや興奮が生じます。
心房筋が細かく振動し、心房が規則的に収縮できません。

無秩序な心房電位がf波(細動波)になります。
f波数は350/分以上。
f波は波形、振幅、ベクトルが一定せず、右房に近いV1誘導で良くみえます。(洞調律ではP波はⅡ誘導で良く見えます)
未治療の心房細動はf波数が350/分以上、HRが100~200/分。
高齢者では房室伝導の機能低下でHRが100/分以下になることもあります。
※心房細動が数日間続くと心内血栓を生じ脳梗塞になりやすいため、早期に抗凝固療法を開始します。

心房細動は、その持続時間により以下の3つのタイプに分けられます。
①発作性心房細動:7日以内に自然停止するもの
②持続性心房細動:7日以上持続するもの
③慢性心房細動:1年以上持続するもの

HRによる心房細動の分類
(心室応答の早い)心房細動:100/分≦HR
心室応答の遅い心房細動:HR<100/分

心電図所見:
①P波がない
②V1にf波を生じる f波がはっきりしないことも
③f波数は350/分以上
④RR間隔が不規則 ※ただし、心房細動に3度房室ブロックが合併するとRR間隔は一定になる

鑑別:
心房細動→伝導比が不定のAFL、MAT
心房細動+3度房室ブロック→単なる3度房室ブロック

検査:
AFLと同じ
心不全の有無を確認
胸部X-p、心エコー、血液検査など(基礎疾患の検索)

治療:
リズムコントロール・レートコントロール・血栓予防の三本柱
・発作性の心房細動は発作停止と予防
・慢性の心房細動はHRのコントロール、心不全の治療

発作停止
 薬剤による停止
 静注:プロカインアミド(アミサリン)、ジソピラミド(リスモダンP)
 経口:キニジン(キニジン)、ジソピラミド(リスモダン)
 直流通電

内服治療
 抗凝固薬(ワーファリン等)、抗不整脈薬(Ⅰ群:リズムコントロール、Ⅰ群・Ⅲ群:レートコントロー    
 ル)

カテーテルアブレーション(近年は治癒率が向上)

(ジギタリスはレートコントロールではなく、強心作用目的。抗不整脈薬によるリズムコントロールは 
確実性に欠けます。)

心房細動では心房からの刺激が心室に伝わらず心室補充収縮が生じることがあります。心室補充収縮のQRS波形は通常のQRS波形と異なります。心房細動の治療にジギタリスを使ったときに多い。

偽性心室頻拍 pseudo VT (AF+WPW)

WPW症候群ではAFの刺激は副伝導路から心室に伝わりやすい。
(理由 副伝導路の不応期は房室結節の不応期よりも短いため。)
デルタ波によりwide QRSになりVTに似た波形になる。このためWPW症候群に伴うAFを偽性心室頻拍といいます。

心電図所見:
①不規則なQRS幅
②P波がない
③頻拍時にもデルタ波がみえることがある

治療:
血行動態が不安定なら迷わず除細動を行います。血行動態が比較的安定している場合は除細動の準備下で抗不整脈薬(Ⅰ群)を使用します。
禁忌→房室伝導抑制薬(アデホス、ワソランなど) 

今日はここまでです。
皆さん今日もお疲れ様でした。

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