※プロモーションを含みます
4回目は刺激伝導系、調律、P波です。
刺激伝導系
心臓の電気刺激の経路。
洞結節から電気刺激が生じます。
洞結節 SA node(sinoatrial node)
洞結節は右房上部に位置するペースメーカー細胞です。
この細胞は自動能を持ち、正常な心拍リズムを形成しています。
成人の場合、洞結節から発生する刺激の頻度は50~100回/分です。
刺激伝導系の経路
洞結節→心房→房室結節→His束→脚部→Purkinje線維(→心室)と進みます。
なお房室接合部は房室結節とHis束から構成されています。
調律
洞調律 sinus rhythm SR
洞調律は基本的な心調律で、洞結節から一定のリズムで刺激が発生します。
P波はⅠⅡaVF、V2~V6で陽性を示し、V1で二相性P波(+-)が見られます。
この結果、正常電気軸は0°~+90°(+15°~+75°)の範囲内に収まります。
広義の異所性心房調律
広義の異所性心房調律ではⅠやⅡ、aVFなどで陰性P波が認められます。
広義の異所性心房調律の分類
1.冠静脈洞調律
2.左房調律
3.(狭義の)異所性心房調律
冠静脈洞調律
心電図所見:
1.Ⅱ Ⅲ aVFで陰性P波 (ⅠaVLで陽性P波、V1で陽性P波)
2.PR時間は正常、または短縮
※冠静脈洞は房室結節にやや近いため、PRが短縮する場合があります。
鑑別:房室接合部調律
左房調律
心電図所見:
1.Ⅰ・V6で陰性P波 (V1で陽性P波)
2.PR時間は正常
(狭義の)異所性心房調律
冠静脈洞調律か左房調律か判定できない場合を指します。
心電図所見:
Ⅰ Ⅱ Ⅲ aVF・V6で陰性P波が見られるなど。
房室接合部調律
房室接合部(房室結節+His束)から刺激が発生します。
この刺激は心室へ伝わるだけでなく、逆行して心房にも伝わります。
そのため、P波は逆行性となり、Ⅱ、Ⅲ、aVFで陰性のP波(P´波)として現れます。
刺激の発生部位によって、P´波の出現部位が異なります。
心電図所見:
1.40/分≦HR(心拍数)<60/分 房室接合部調律
2.P´波はⅡ Ⅲ aVFで陰性
P´波の出現部位①QRSの前 ②QRSに重なり隠れる ③QRSの後ろ
QRSの前にP’波が出現する場合、PR時間は短縮する。
房室接合部はある程度範囲があるので、発生源により洞性P波に近いこともある!
房室接合部調律のHRによる分類
房室接合部性徐脈:HR~40/分
房室接合部調律:HR40~60/分
促進性房室接合部調律:HR60~100/分
房室接合部頻拍:HR100/分~
ER心電図基本編の選択肢と解答を作り、noteにまとめました。
下記から是非、見にきてくださいね。
P波
P波は心電図上で最初に現れる陽性波であり、心房の脱分極(興奮)を示します。
心房の興奮は右房から左房へと伝播します。
P波の構成については
初めの1/3は右房成分、中央の1/3は右房成分+左房成分、後ろの1/3は左房成分
正常P波
ⅠⅡaVF・V2~V6で陽性P波が確認され、P波の電気軸は+15°~+75°( 0°~+90°とする場合もあり)。これは洞調律に一致します。
ⅡでP波の高さは2.5mm未満(0.25mv未満)、幅は3mm未満で、右房拡大や左房拡大がないことを示します。
V1でP波の高さは2mm未満、P波の陰性部分の幅(mm)×深さ(mm)は1未満で右房拡大・左房拡大がないことを示します。
注意点
Ⅲ aVL・V1単独の平坦~陰性P波はOK。
(Ⅲ aVL・V1は正常P波の電気軸からはずれているため)
心房拡大
右房拡大(右房負荷) right atrial enlargement RAE
※洞調律以外の①冠静脈洞調律、②左房調律、③房室接合部調律では心房拡大の評価は出来ません!
心電図所見:
・Ⅱ誘導でP波の高さが2.5mm以上 →肺性P波
・V1誘導でP波の高さが2.0mm以上 →右心性P波
上記のいずれかを満たす場合、右房拡大が疑われる。
右房拡大を引き起こす疾患・病態
肺動脈狭窄症(PS)、三尖弁狭窄症(TS)、三尖弁閉鎖不全症(TR)、心房中隔欠損症(ASD)、肺塞栓症(急性肺性心)、COPD、Fallot四徴症、Ebstein奇形
左房拡大(左房負荷) left atrial enlargement LAE
心電図所見:
・Ⅱ誘導でP波が二峰性で幅が3mm以上 →僧帽性P波
・V1誘導で陰性P波の幅(mm)×深さ(mm)が1以上 →左心性P波
上記のどちらかを満たす場合、左房拡大となる。
左房拡大になる疾患・病態
左室肥大(LVH)、肥大型心筋症(HCM)、大動脈弁狭窄症(AS)、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、僧帽弁狭窄症(MS)、僧帽弁閉鎖不全症(MR)、動脈管開存症(PDA)
両房拡大(負荷)
心電図所見:
ⅡでP波の高さが2.5mm以上
V1で陰性P波の幅(mm)×深さ(mm)が1以上
これらの両方が見られる場合、両房拡大となる。
P波がないもの
P波がない、もしくはP波が見えない場合には、以下の状態が考えられます
洞停止、洞房ブロック、AF、AFL、房室接合部調律、心室固有調律、AVNRTなど
今日もお疲れ様でした。
皆さんの心電図ライフに幸あれ。
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