心電図⑨ 脚ブロック 右脚ブロック 左脚ブロック

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9回目は脚ブロック、右脚ブロック、左脚ブロックです。

脚ブロック BBB bundle branch block

右脚ブロック RBBB right bundle branch block

右脚の伝導障害によって右室が左室に比べて遅れて興奮する状態です。
心電図では幅の広いQRS波、V1V2でrSR´型のQRS、V5V6で幅の広いS波を認めます。

完全右脚ブロック CRBBB complete right bundle branch block

心電図所見:
①0.12秒≦QRS
②V1V2でrsR’型やrSR’型のQRS 必ずR<R´
③二次性ST-T変化(陰性T波、ST低下)
④ⅠaVL・V5V6で幅広いS波(0.04秒以上)
⑤移行帯はV1V2
※右室の心筋量は少ないため、右脚ブロック単独では軸偏位は起こりません。


→完全右脚ブロックでは軸をチェックして2枝ブロックや3枝ブロックがないか確認しましょう。

原因:ほとんどが健常人、その他は心筋梗塞、ASD、ECD、Ebstein奇形など

鑑別(心電図上):WPW症候群(A型)、右室肥大、心室内変行伝導、Brugada型症候群、心室頻拍

不完全右脚ブロック IRBBB incomplete right bundle branch block

0.10秒≦QRS<0.12秒

ASDは不完全右脚ブロックと右軸偏位あり
ECDは不完全右脚ブロックと左軸偏位あり

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左脚ブロック LBBB left bundle branch block

左脚の伝導障害によって左室の興奮が遅れます。
心電図ではV1とV2でrS型orQS型QRSを認め、ⅠaVL・V5V6でq波の消失と幅の広いR波(ノッチ、スラー)を認めます。

※”不完全左脚ブロック”という言葉はほぼ使いません。

心電図所見:
①0.12秒≦QRS
②V1V2でrS型orQS型のQRS、二次性ST-T変化(ST上昇、T波上昇)
ⅠaVL・V5V6にq波はない。(q波があった場合は左脚ブロックではない。)RR’型(ノッチ)やR型(スラー)のQRS、二次性ST-T変化(ST低下、陰性T波)
④正常軸or左軸偏位
⑤移行帯はV5、V6(正常のことも)

原因:狭心症、心筋梗塞、心筋症、高血圧性心疾患など

合併症:心筋梗塞(原因でもある)、狭心症、徐脈性不整脈、心不全

鑑別(心電図上):WPW症候群(B、C型)、左室肥大

Sgarbossa criteria (参考)

左脚ブロック時の心筋梗塞・心筋虚血の有無の判断
①極性が一致した1mm以上のST上昇→5点
②極性が一致した1mm以上のST低下→3点
③極性が一致しない5mm以上のST上昇→2点
合計3点以上で心筋梗塞・心筋虚血が疑われます。(約80~90%の確率)

特異度は高いですが、感度は低いです。
つまりSgarbossa criteriaで0点だったとしても心筋梗塞の可能性はあります。

間歇性(間欠性)脚ブロック
心電図記録内で脚ブロックが出たり消えたりするもの

ER心電図基本編の選択肢と解答を作り、noteにまとめました。
下記から是非、見にきてくださいね。

ER心電図基本編の3倍活用術|医師マイケル 心電図ブログ
ER心電図基本編は良い問題集です。 本書をさらに活用するために全200問に選択肢を作り、解答をつけました。 選択肢で解くことで、短時間で多くの問題をこなせ、メキメキ実力がつくことでしょう。 是非、ご活用下さい。 おまけとしてER心電図基本編...

左脚分枝ブロック(ヘミブロック)

左脚は前枝と後枝に分枝します。
前枝に伝導障害を生じたものを左脚前枝ブロック、後枝を左脚後枝ブロックといいます。
前肢ブロックは単独でもしばしば認められます。後枝ブロックは単独でみられることは少なく、2枝または3枝ブロックに合併していることが多い。

左脚前枝ブロック LAH left anterior hemiblock

心電図所見:
①強い左軸偏位(-45°~-90°)
②QRS幅<0.12秒
③Ⅱ、Ⅲ、aVFでrS型

原因:心筋症、高齢者、健常人でも

鑑別:陳旧性下壁梗塞、WPW症候群、左室肥大、COPD

左脚後枝ブロック LPH left posterior hemiblock

心電図所見:
①強い右軸偏位(+120°~+180°)
②QRS幅<0.12秒
③Ⅰ、aVLでrS型
右室肥大や立位心など他に右軸偏位をきたす原因がない

原因:心筋梗塞、心筋症、高齢者

診断:右軸偏位をきたす他疾患の除外が必要 左脚後枝ブロックは除外診断名とも言えます

鑑別:陳旧性側壁梗塞、WPW症候群、右室肥大、立位心

2枝ブロック bifascicular block

①完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック (強い左軸偏位 QRS軸-45°~-90°)
②完全右脚ブロック+左脚後枝ブロック (強い右軸偏位 QRS軸+120°~+180°)

予後:基礎心疾患がなく、無症状の場合は比較的予後良好。虚血性心疾患、心筋症、弁膜症などがある場合は3度房室ブロックに進行しやすく、原疾患の治療とともに経過観察が必要です。

3枝ブロック trifascicular block

3枝ブロックは心電図上、2枝ブロック+1度房室ブロックの波形になります。
ただし、実際に房室ブロックがあるわけではありません。残っている1枝の伝導障害によって1度房室ブロックの波形となるのです。
※3枝全てにブロックが起きれば⇒3度房室ブロック!(×3枝ブロックではありません)

心拍依存性脚ブロック

心拍数が増加したときに脚ブロックが生じるもの。


今日もお付き合い頂き、ありがとうございました。

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